私はそれを見るたびに貴方を思い出すでしょう
10分経った頃だろうか。

歩き疲れた私は、近くにあったベンチに腰を下ろした。

「誰もいない…ここどこだろう。」

1人でそう言って、ため息をついた。

すると後ろから微かな音が聞こえた。

振り返るとそこには、深い緑色の目をして

腰まではありそうな美しい黒髪を一つに結わえた高校生くらいの男が立っていた。

その男は、私に近づくと不思議そうな顔をしてこう言った。

「…お前、どうやってここに来たんだ。」

言いながら、男は私のいるベンチに座る。

私が何も答えないでいると、

「お前、名前は。」

男がぶっきらぼうに尋ねてきた。

この男はそういう言い方しかできないのだろうかと、少々苛立ちながら

私は男の質問に答えようとした。

…あれ?私の名前ってなんだっけ。

自分の名前だというのに、全く思い出せない。

「…分からない。」

そう答えるしかなかった。

「分からない…か。俺と同じだな。」

男はそう言って、ニヤッと笑った。

「分からないなら、俺が考えてやろう。
お前も俺の名前を考えてくれ。」

そして、どこか遠くを見て黙り込んだ。




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