私はそれを見るたびに貴方を思い出すでしょう
大分体も温まった。

緑は空になったマグカップを見つめて何かを考えている。

すると、突然口を開いた。

「透愛は…自分のこと、何も覚えてないのか?」

「自分のこと…?」

私は一体何者で、どこから来たのか。

ふと、頭の中にある人の顔が浮かんだ。

明るい紫色の瞳をした彼。

「…亜瑠(ある)?」

「…何か思い出したか?」

「…亜瑠。人の名前、私の大切な人だった気がする。」

とっても大事な人だった筈なのに、

名前以外何も覚えていない。

「会いたいか?」

緑が聞いてきた。

「うーん…まだ今はいい。」

どんな人かも覚えてないのに会ったって、きっと混乱するだけ。

「…そっか。会いたくなったら、言えよ。」

「うん」

私が頷くと、緑は立ち上がって2つのマグカップをキッチンに持って行った。






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