風便り〜大切なあなたへ〜
自転車に乗って10分くらいで、見覚えのある家についた。
ゴールデンウイーク前にも来た、とても大きな家・・。
「なに突っ立ってんだよ?入れよ」
「え!?」
「なんだよ?」
守屋くんは玄関の前に自転車を止めると、私の手を強引に引いた。
私は守屋くんを見上げた。
「で、でも・・」
「誰もいねえから安心しろ」
「・・・」
それは、それで、緊張するよ・・。
私は戸惑いながらも、守屋くんに手を引かれて、守屋くんの家に足を踏み入れた。
家の中は、綺麗にされていて、高そうなものがさりげなく置いてあって、センスのいいお家に見えた。
階段を上って、すぐの部屋に守屋くんは通してくれた。
あまり何も置いていない、シンプルというか、殺風景な広い部屋だった。
「ここ・・」
「俺の部屋、適当に座れよ」
「うん・・」
適当って言われても、どこに座ったらいいのかな・・?
守屋くんの部屋にいるなんて、すごく緊張するよ・・。
あまり何も置いてないとか、守屋くんらしい部屋だよね・・。
「あ・・これ・・」
私は勉強机に大事そうに置いてあった、見覚えのある犬のぬいぐるみを手に取った。
これ・・私が守屋くんの誕生日にプレゼントしたぬいぐるみだ・・。
守屋くん、本当に持っててくれたんだ・・。
私は嬉しくて、自然と頬が緩んだ。
まだ頬がジンジンして痛いけど、守屋くんがぬいぐるみを持っててくれた嬉しさの方が大きかった・・。
「お前から貰った物だからな、すげえ大事にしてる。お前のことも同じように・・それ以上に俺は大事にしてえ」
そう言って守屋くんは、後ろから私を抱きしめた。
背中から守屋くんの温もりが伝わってきて、私の心臓は一気に鼓動を速めた・・。
胸のあたりで小さく息が詰まり、私の顔はどんどん熱くなっていった。
「・・お前、忘れてねえだろうな?俺、怒ってんだからな」
「・・・」
「・・来いよ」
そう言うと守屋くんは、私をベッドのあるとこまで、手を引いた。
守屋くんはベッドに座ると、足を広げ、その間に私に座るように、ベッドを軽く叩いた。
「座れよ」