風便り〜大切なあなたへ〜





そこに座るのは、ちょっと恥ずかしいよ・・。

私は戸惑いながら、守屋くんに聞いた。



「・・と、隣に座ってもいい・・?」


「ダメだ、いいから早く座れ」



そう言うと守屋くんは、私の手を引いて、無理やりそこに座らせた。

そのまま守屋くんは、後ろから私を、ぎゅっと抱きしめた。


・・どうしよう。

恥ずかしいよ・・。

心臓が、壊れちゃうよ・・。


私の心臓は、さっきよりも鼓動が速くなって、胸が苦しくなった。



「安心しろ、今はまだ何もしねえよ」


「え?」


「このまま俺の話を聞いてくれ」



守屋くんは、私の耳元で囁きながら話し出した。

私は守屋くんが話すたび、守屋くんの息が耳にかかって、こそばかった・・。



「真子・・お前、もっと自分を大切にしろよ。俺のために、お前が傷つくところなんて見たくねえんだよ」


「・・・」



守屋くん・・。

私も同じ気持ちだよ・・?

守屋くんの傷つくところなんて見たくない・・。



「・・・お前と初めて会った時、お前、俺のために泣いてくれたよな?あの時から、俺、お前のことが好きだった」


「え・・?」


「俺が傷ついた顔してるって、辛そうな顔してるって」


「・・うん」



あの時の守屋くん、本当に辛そうに見えたよ・・。

何かに傷ついているみたいで、私まで見てて苦しくなった・・。



「・・いや・・好きだって自覚したのはあの時だったけど、その前から、俺はお前に惹かれてた」


「え?」


「・・あの頃の俺、かなり荒れてて、自分がわからなくなってたんだよ」


「・・・」


「そんな時、誰にも気づいてもらえないこいつはクソだって思って、踏んづけたタンポポに、お前が頑張って生きてるんだねって話しかけてるのを聞いて、俺は自分に言われてるみてえだって思った」


「・・・」


「そしたら俺、無意識にお前に話しかけてた」



そう言って守屋くんは、私の耳元で小さく笑った。

守屋くん・・。





< 174 / 273 >

この作品をシェア

pagetop