風便り〜大切なあなたへ〜
大和と付き合いはじめて、三ヶ月が過ぎた。
放課後、大和とコンビニに寄って、アイスを買った。
外に出ると、照りつける太陽が眩しくて、先の道には蜃気楼ができていた。
「あー、くそっ、なんでこんなに暑いんだよ」
そう言って大和は、アイスを食べ終わると、隣でシャツの裾をパタパタとさせはじめた。
私もしたいけど、さすがに外ではできない・・。
「しかたないよ・・夏だもん」
そう言って私は棒のアイスを口に入れた。
ひんやり冷たくて、気持ちいい・・。
やっぱり、夏はアイスが一番だね。
だけど、高い気温と、コンクリートからの照り返しで、アイスはもう溶けはじめている・・。
私のアイスを見て、大和は私の指に垂れてきたアイスを、私の指ごと舐めた。
「や、大和・・」
「なんだよ?」
「な、なんでもない・・・」
私は赤くなった顔を、大和に見られないように俯いた。
大和はこういう恥ずかしいことを、いつも平気でする・・。
そのたびに、私はいつもドキドキして、顔に熱が集中する。
ただでさえ暑いのに、大和のせいで私はもっと熱くなった。
「真子、顔あげろよ」
「・・・」
私はゆっくり顔を上げて、大和を見上げた。
「顔、真っ赤」
「・・・」
大和と付き合った時から、このやり取りは変わらない・・。
変ったことと言えば、昔は守屋くん呼びだったのが、今はもう、完全に大和になった。
それ以外は、あんまり付き合い出した時と、変わらない気がする。
「アイス溶けてるぞ。早く食べねえと、俺がお前ごと食っちまうぞ?」
そう言って大和は、意地悪に笑った。
「だ、大丈夫、ちゃんと食べるよ」
そう言って私は慌ててアイスを口に入れた。
大和はそんな私を、じーっと見ていた。
あれ、大和もこれ、食べたかったのかな・・?
私はアイスを口から出して、大和を見上げた。
「ごめんね、大和もこれ食べたかった?あとこれだけだけど・・」
そう言って、私は大和にアイスを渡そうとした。
だけど、大和は受け取らなかった。
「いらねえよ」
「え?」
「いらねえ、お前が食えよ。見といてやるから」
そう言って大和は優しく微笑んだ。