風便り〜大切なあなたへ〜





「お前の手、冷たくて気持ちいいな」


「え?」


「夏は、お前が俺の手を冷やしてくれよ。冬は、俺がお前の手、温めてやるから」



そう言って大和は優しく笑った。

私は嬉しくて、自然と頬が緩んだ。



「うん」



そう言うと、私は首に付けている、ネックレスに通してある指輪を、シャツの上からぎゅっと握った。

私には下を向いて歩く以外に、もう一つ癖ができた。

それは、大和から貰った大切な指輪を、嬉しい時とか、幸せな時に、ぎゅっと握ること。

思い出のタンポポが入った指輪を、お守りがわりにして、お風呂以外の時は、ずっと身につけている。

大和も、そんな私の癖に気づいてくれて、いつも確認してくれる。



「お前、今、幸せか?」



そう笑顔で聞いてくれる。



「うん」



私も笑顔で大和を見た。



「もうすぐお前の誕生日だな」


「あ・・そうだね」



私は毎日が楽しくて、自分の誕生日の事なんて、すっかり忘れていた・・。


大和、覚えててくれたんだね・・。

嬉しい・・。


私は少し微笑んで、ぎゅっと指輪を握った。



「今は大和と歳が二つ離れちゃってるけど、また一歳差になるね」


「そうだな」



そう言って大和は優しく微笑んだ。



「お前、誕生日どうすんだよ?」


「え?」



私は大和の急な質問に、びっくりした。

私は大和と一緒に過ごすものだと思っていたけど・・。

よく考えてみたら、そんな約束してない・・。

だけど、恋人同士って、そういうものだと私は思い込んでいた・・。



「私・・大和と一緒に過ごしたい」



私がそう言うと、大和は優しく微笑んだ。



「あ?そんなのあたりまえだろ」


「え?」


「そうじゃなくて、お前は俺とどう過ごしたいのかを、聞いてんだよ」



そう言って大和は、私の頭をクシャクシャと撫でた。

私は大和の何気ない言葉に嬉しくて、目が少し熱くなった。



「泣くなよ」


「泣いてないよ・・」



私、まだ泣いてない・・。


だけど、強がってはみたものの、やっぱり私の涙は頬を伝った。





< 188 / 273 >

この作品をシェア

pagetop