風便り〜大切なあなたへ〜
「お前の手、冷たくて気持ちいいな」
「え?」
「夏は、お前が俺の手を冷やしてくれよ。冬は、俺がお前の手、温めてやるから」
そう言って大和は優しく笑った。
私は嬉しくて、自然と頬が緩んだ。
「うん」
そう言うと、私は首に付けている、ネックレスに通してある指輪を、シャツの上からぎゅっと握った。
私には下を向いて歩く以外に、もう一つ癖ができた。
それは、大和から貰った大切な指輪を、嬉しい時とか、幸せな時に、ぎゅっと握ること。
思い出のタンポポが入った指輪を、お守りがわりにして、お風呂以外の時は、ずっと身につけている。
大和も、そんな私の癖に気づいてくれて、いつも確認してくれる。
「お前、今、幸せか?」
そう笑顔で聞いてくれる。
「うん」
私も笑顔で大和を見た。
「もうすぐお前の誕生日だな」
「あ・・そうだね」
私は毎日が楽しくて、自分の誕生日の事なんて、すっかり忘れていた・・。
大和、覚えててくれたんだね・・。
嬉しい・・。
私は少し微笑んで、ぎゅっと指輪を握った。
「今は大和と歳が二つ離れちゃってるけど、また一歳差になるね」
「そうだな」
そう言って大和は優しく微笑んだ。
「お前、誕生日どうすんだよ?」
「え?」
私は大和の急な質問に、びっくりした。
私は大和と一緒に過ごすものだと思っていたけど・・。
よく考えてみたら、そんな約束してない・・。
だけど、恋人同士って、そういうものだと私は思い込んでいた・・。
「私・・大和と一緒に過ごしたい」
私がそう言うと、大和は優しく微笑んだ。
「あ?そんなのあたりまえだろ」
「え?」
「そうじゃなくて、お前は俺とどう過ごしたいのかを、聞いてんだよ」
そう言って大和は、私の頭をクシャクシャと撫でた。
私は大和の何気ない言葉に嬉しくて、目が少し熱くなった。
「泣くなよ」
「泣いてないよ・・」
私、まだ泣いてない・・。
だけど、強がってはみたものの、やっぱり私の涙は頬を伝った。