風便り〜大切なあなたへ〜





そういえば大和の家って、会社経営してるんだっけ・・。

やっぱ忙しいのかな・・?

あんな大きな家に、大和一人だけだなんて、寂しいよね・・。

私には、弟と妹がいるから家の中は賑やかだけど、大和は一人っ子だから、騒げる兄弟もいないんだよね・・。


そんなことを考えている間に、私の家についた。

いつもはここで繋いでいる手を離して、さよならするんだけど、今日は、私は、大和の手を離さなかった。



「真子?」



大和は不思議そうに私の顔を覗き込んだ。



「・・・大和、上がっていって」



私は小さく緊張しながら、大和に言った。



「え?」


「大和を家族に紹介したいの・・」


「今か?」


「うん・・」



私は大和を見上げて、小さく首を縦に振った。


さっきまであんな話をしていたし、あの大きな、寂しい家に大和が帰っちゃうと思ったら、なんだかちょっと寂しくなった・・。

余計なお世話かもしれないけど、ちょっとでも大和が寂しくないように、大和に私の家に上がってもらいたかった。

私の家は、弟と妹のおかげで、いつも賑やかだから・・。



「いいのか?」


「うん、上がって?」


「じゃあ・・お邪魔します」



そう言って、大和は私の手をぎゅっと握った。


大和緊張してるのかな?

顔が少し強張っているような気がする。

大和、可愛いな・・。


私は少し頬を緩めて、玄関のドアを開けた。



「ただいま」


「・・お邪魔します」



大和は消え入りそうな声で言った。

声も少し震えているし、やっぱり緊張してるんだね・・。

私は優しく大和を見て、微笑んだ。



「大和、大丈夫だよ」


「・・おう」



そう返事をしたけど、大和はまた、私の手をぎゅっと握った。

大和、ほんと可愛い・・。



「おかえりー!」


「おかえり〜」



そう叫んで、リビングの扉を開けて、妹と弟が走ってきた。





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