風便り〜大切なあなたへ〜
「・・誰?」
弟の祐太が大和を見て呟いた。
祐太は、2つ下の弟で、今は中学2年生。
中学入ってから、急に無愛想になったけど、でも本当はとても優しい良い子。
きっと大和のことも、気に入ってくれる。
「あー!お姉ちゃん手、繋いでるー!」
私と大和の手元を見て、妹の結依が叫んだ。
結依は、4つ下の小学6年生。
最近おませさんになってきて、お母さんもちょっと困り気味。
「守屋くんだよ。私の、か、彼氏・・」
声に出して家族に言うのって、こんなに恥ずかしいんだ・・。
私は赤くなった顔を隠すように、少し俯いた。
「守屋大和です」
隣から大和のしっかりした声が聞こえてきた。
私はちらっと大和を見上げた。
さっきまであんなに緊張してたのが、嘘みたいに、大和の顔は、しっかりした顔つきになっていた。
「うっそー!?お姉ちゃん彼氏いたの!?しかも超イケメンじゃん!」
目を輝かせて結依が叫ぶと、祐太がうるさそうに、耳を塞いだ。
「うるさい」
「大和、妹の結依と、弟の祐太だよ。上がって?」
私は二人を横目で見て、靴を脱いで大和に言った。
「お邪魔します」
大和は、今度はしっかりした声で言って、靴を脱いで中に入った。
後ろから、結依と祐太が言い合いながらついてくる。
「お母さん、ただいま」
台所で夕飯の準備をしているお母さんに声をかけた。
お母さんは振り向くと、大和を見た。
「あら、どちら様?」
「守屋大和です。真子さんとー・・」
「お母さん!!お姉ちゃんの彼氏だって!!」
「うるさいんだよ」
「まあ・・・真子に彼氏がいたなんて、しかもすごく男前じゃないの!」
大和が挨拶している途中で、結依と祐太が割り込んで叫んだ。
そこにお母さんもテンションを上げて、結依と一緒に喜んでいる・・。
大和を見ると、固まっていた。
「・・お前の家族、すげえな」
「うるさくて、ごめんね・・」
私は苦笑いを浮かべて、大和を見上げた。
「いや、賑やかでいいんじゃねえか?」
そう言って大和は微笑んでくれた。
私は嬉しくなって、指輪をぎゅっと握った。