風便り〜大切なあなたへ〜
それからずっと、結依と祐太は部屋から出ていってくれなかった。
せっかく大和と一緒にいられる時間だったのに、二人きりにはさせてもらえなかった・・。
「俺、そろそろ帰るわ」
そう言って大和は立ち上がった。
すっかりみんなで話し込んじゃって・・って、主に結依が一方的に話してただけだけど・・。
でももう、外は真っ暗になっていた。
窓の外には、お月様が顔を覗かせている。
私と大和は部屋を出て、一旦リビングに降りた。
「あら、もう帰るの?夕飯でも一緒にどうかと思ったのだけれど・・」
「ありがとうございます。でも、今日は帰ります」
大和はお母さんに笑顔を向けて、頭を下げた。
「あら、そう?・・また来てね」
お母さんは少し残念そうに言った後、笑顔で言った。
「はい」
玄関を出ると、大和は私の手を取って、優しく握ってくれた。
私は大和を見上げた。
「今日はありがとな」
大和は優しく微笑んだ。
「ごめんね・・結依が質問責めにして・・うるさかったでしょ・・?」
結依は、私が妬いちゃうくらい大和にベッタリだった。
だけど、結依は妹だし、小学生だし、私は妬いているのを悟られないように我慢して、普通に振舞った・・。
「いや、お前んちが賑やかで羨ましいよ。俺の家は、俺しかいねえから、静かだしな」
「大和・・」
「そんな顔すんなよ、今日は楽しかったし、俺たちが結婚して、子供ができたら、こういう笑顔が溢れる家庭にしてえよ」
そう言って大和は優しく笑った。
「大和・・私も・・」
私は嬉しくて、指輪をぎゅっと握った。
「目、潤ませてんじゃねえよ」
「だって・・嬉しいんだもん・・」
私がそう言うと、大和は私の頭を優しく撫でてくれて、そのあと私をぎゅっと抱き締めてくれた。
「お前が嬉しそうに、指輪を握ってると、俺も嬉しい」
そう言うと大和は、私の顔に手を添えてゆっくり顔を近づけてきた。
私はそっと目を閉じた。
優しく大和が触れると、胸の奥が熱くなって、また涙が溢れた。
大和は私から離れると、優しく微笑んだ。
「本当にお前、泣き虫だな・・でも、そんなお前も、俺はすげえ好きだ」
「大和っ・・ありがとう、大好きだよっ」