風便り〜大切なあなたへ〜
教室に入ると、風香ちゃんが私に抱きついてきた。
「真子ちゃん、お誕生日おめでとう!」
「ありがとう」
私は笑顔で風香ちゃんに言った。
大和は私に抱きついてる風香ちゃんを、軽く睨んで言った。
「離れろよ」
「やだよ!真子ちゃんは、私のなんだから!」
「は?ふざけんなよ。こいつは俺のだ」
そう言って大和は、私から風香ちゃんを引き剥がすと、後ろから私に抱きついた。
「大和、やめてよ・・」
そう言うと、私は後ろをちらっと見た。
私は後ろから大和に抱きつかれたり、抱きしめられたりするのにすごく弱い・・。
なんでか分からないけど、後ろからだとすごくドキドキする・・。
「なんでこいつは良くて、俺はダメなんだよ」
そう耳元で囁かれた。
私はぎゅっと目を閉じた。
耳元で囁かないで・・。
「ちょっと!真子ちゃんをいじめないで!」
「いじめてねえよ。これのどこがいじめてんだよ?」
そう言うと、大和は私から離れた。
私はまだ速く動いている鼓動を静めながら、大和を小さく睨んだ。
「大和の、バカ・・」
「なんでだよ?最初に抱きついたのは、こいつだろ」
「私はいいんですぅー」
「その言い方、むかつく」
そう言うと、大和は小さく息を吐いて、自分の席に座った。
風香ちゃんは、キョトンとしながら呟いた。
「あれ?もっと怒るかと思ったのに」
私もそう思ったけど、大和って口悪いし、ぶっきら棒で態度も大きいけど、あんまり怒ったり、騒いだりしない・・。
意地悪だけど、優しいし、一つ年が違うだけで、こんなにも大人っぽいのかな・・?
「こら、何騒いでいるんだ?お前らの騒いでる声聞くだけで、暑さ倍増だぞ」
そう言って、小野先生は私と風香ちゃんの頭を軽く出席名簿で叩いた。
「先生、これは虐待です!体罰です!」
そう言って風香ちゃんは小さく先生を睨んだ。
「あほ言ってねえで、ホームルーム始めるぞ」
そう言ったあと、先生は私に小声で、爽やかに微笑んで、お誕生日おめでとうと言って、教壇に上がった。
「出席とるぞー」