風便り〜大切なあなたへ〜





胸元に"入学おめでとう"と書かれた造花を付け、小さな緊張を噛み締めた。



一年三組。

小林真子。

今日から、新しい生活が始まる。



担任の先生の紹介と、一人一人呼ばれる名前。

校長先生の長い話で、本当にこの高校に入学したんだと、実感した。


入学式が終わり、教室に移動して、黒板に書かれた席に座った。



今日からここが、私の席なんだ・・・。

この机で、私、勉強するんだね。



私の席は、窓際の一番後ろだった。

窓の外を見ると、満開の桜が綺麗な並木道に、どこまでも広がる青い空が、素敵だと感じた。

隣を見ると、空いている席がひとつ。



この席の人、入学式に来なかったのかな?



そう思いながら、先生の挨拶を聞いた。

担任の先生は、小野拓也。

25歳。

笑顔が爽やかな、明るい先生。

担任を、任せてもらえたのは、私たちのクラスが初めてらしい。



「今日は来ていないが、このクラスでは、一つ上の学年で留年した生徒と、一緒に勉強してもらうからな!みんな仲良くしてやってくれ!」



教室中がざわついた。



年上の人と勉強するなんて、そんなの、思ってもみなかった。

隣の席の人がそうなのかな?

どんな人なんだろう?

・・不良だったら、嫌だな。




< 2 / 273 >

この作品をシェア

pagetop