風便り〜大切なあなたへ〜
「なんかねー、守屋くん、サッカー部の期待のエースだったらしいんだけど、怪我して部活も辞めちゃって、それから荒れ出したらしいよ?それまで、みんなの人気者だったらしいんだけどね」
「そうなんだ・・守屋くん、ちょっと可哀想だね」
「そうだねー」
先生は、そこまで教えてくれなかった。
だけど、辛いことがあったからって、そんな風になっちゃいけないと思う。
私は、まだ辛い経験をしたことがないから、そういう風にしか思えなかった。
隣の席を見た。
なんだか机が淋しそうに見えた。
「そんなことより!真子ちゃんも、一緒にマネージャーやらない?ちょっと人手が足りなくてさー、大変なんだよ」
「私は・・やめとく。私、鈍臭いからそういうの逆に迷惑かけちゃうと思う」
「そっかー、残念」
「ごめんね?」
「いいよ、いいよ!気にしないで!」
そう言いながら風香ちゃんは、お弁当を食べ終わると、自分のホッペをペチペチと軽く叩いた。
「よし!」
そう言って、気合を入れる。
「頑張ってね」
「うん、ありがとう!ちょっと行ってくる!」
風香ちゃんは、毎日お弁当を食べた後、隣のクラスの幼なじみに会いに行っている。
嬉しそうに頬を緩めながら、幼なじみのことを話す風香ちゃんは、とっても可愛い。
恋してるんだね。
身体中からそういうオーラが出ている。
風香ちゃん、乙女だなー。
私も恋したいけど、男子がちょっと苦手で、まだあまりクラスの男子とも話していない。
話しかけられると、緊張しちゃって、声が小さくなってしまう。