風便り〜大切なあなたへ〜
学校も終わり、私は一人、土手を歩いていた。
私には昔から、足元を見て歩く癖がある。
それは、いろんな発見ができるから。
今日は、道端にひっそりと咲いている、タンポポを見つけた。
タンポポは、誰かに踏まれたような跡が残っているけど、力強く存在している。
私は足を止め、屈んでタンポポを見つめた。
「頑張って生きてるんだね」
そう言うと、タンポポが微笑んでくれたような気がした。
気のせいかもしれない。
ただ、風が吹いて、タンポポが少し、揺れただけかもしれない。
だけど、私にはそう見えた。
「お前、変わってんな」
しばらくタンポポを見ていたら、頭上から声が聞こえてきた。
振り向くと、そこには知らない男の人。
同じ高校の制服を着ている。
背が高くて、茶髪で、鋭い目をしていて、口の端から血が滲み出ていた。
「・・た、タンポポ!」
なにを言ったらいいのか、わからなかった。
気づいたらタンポポという単語が、口から出ていた。
「あ?」
こ、怖い・・。
頭が真っ白になった。
クラスの男子とも、普通に話せないのに、こんな怖い人となんて、まともに話せないよ・・。
「が、頑張って生きてる!」
もう自分が、何を言っているのか、わからなかった。