風便り〜大切なあなたへ〜





「・・そのタンポポ、俺が踏んだ」


「え・・?」



少しの沈黙のあと、彼は私の横に屈んで、タンポポを触った。



「こいつ、頑張って生きてるように思うか?」



淋しそうな目をしながら、彼は言った。

口の端にある傷のせいか、その目のせいか、彼が何かに傷ついているように見えた。



「・・うん、頑張って生きてると思う。何度傷ついたって、そこにちゃんと生きてるって、ちゃんと存在してるって、誰かがちゃんと見てくれてるって、そう思っていると思うよ」


「・・そうか、踏んじまって、悪かったな」



そう言いながら、彼は、タンポポの黄色を優しく撫でた。


不思議な人だな・・。

怖そうだと思ったのに、不思議と怖くない。

話せないと思ったのに、クラスの男子より話しやすい。


自然と彼の口元に、勝手に手が伸びていた。

痛そう・・。


彼はびっくりした目で、私を見ていた。



「・・痛い?」


「あ?・・別にこれくらい、痛くねえよ・・つーか、触んな」



言われると同時に、手首を掴まれた。

そのまま地面に、押し倒される。



「え・・え・・?」



何が起こっているの?

頭が混乱して、今の状況が理解できない。





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