風便り〜大切なあなたへ〜
「お前の名前・・」
「え?」
私の涙が枯れてきた時、ふと彼が呟いた。
だんだん声が小さくなっていき、最後は何を言っているのか聞き取れなかった。
「名前、教えろよ」
今度はちゃんと聞き取れた。
命令口調だったけど、不器用そうな、この人なりの聞き方なんだと思った。
「小林真子」
「・・小林、真子」
「はい」
名前を呼ばれ、満面の笑顔で、彼を見た。
新しい友達ができたような、そんな気持ちになった。
「守屋大和」
「え?」
「俺の名前」
彼も名前を教えてくれた。
本当に、友達になれるかれしれない。
嬉しい気持ちでいっぱいだった。
守屋大和。
心の中で、そっと呟いた。
あれ・・?
・・守屋大和?
「え!?守屋大和!?」
びっくりして、大きな声を出してしまった。
彼もびっくりしたような顔で、私を見ている。
「なんだよ、人の名前、大声で叫びやがって・・」
だって、守屋大和って、私の隣の席の・・。
制服も同じだし、同姓同名なんて、早々いないでしょ?
何も言わない私に、守屋くんが不機嫌そうに私を軽くにらんだ。
「あ、ごめんね・・たぶん、私、守屋くんと同じクラスで、隣の席だから、びっくりしちゃって・・」
「あ?隣の席?」
そっか、守屋くん学校来てないから、何も知らないよね。