課長の瞳で凍死します ~旅支度編~
「そ、そうだ、僕、ママは……

 あれ?」

 ともかく、この子を母親に、と思ったのだが、何処を見てもその子が居ない。

 走って周囲を見回ったが、やはり居ない。

 この近所の子で、家にでも戻ってしまったのかもしれない。

 とりあえず、無事だったからよかったが。

 真湖は、既にバスの影も形もない道路を見ながら、立ち尽くす。

 ……バ、バス、行っちゃった。

 次のバスといっても、休みの日なので、本数も少なく、すぐにはないようだった。

 そうだ。
 タクシー! と思ったが、住宅街の道なので、そうそうタクシーも通らないし、普段乗らないので、電話番号もわからない。

 タブレットで検索して……

 ああっ。
 置いてきたっ!

 スマホで検索してっ。

 見当たらないっ!

 そんなことをやっている間に、随分と出遅れてしまった。

 課長ーっ。
 待ってくださいーっ、と思ったとき、スマホが鳴った。
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