課長の瞳で凍死します ~旅支度編~
「沢田、沢田」
そう呼びかけられ、は? と真湖は顔を上げた。
ふと気づけば、窓からの光は眩しく、自分は広げたままのスーツケースに突っ伏して寝ている。
しかも、頰が痛いと思ったら、スーツケースの縁に顔をぶつけて寝ていたようで、触れてみると、頰に跡がついている。
「いやーっ。
新婚旅行なのにーっ」
絶叫する真湖の横を通りながら、雅喜がなにやってんだ、という顔をする。
「早くしろよ」
と洗面所の方から声がした。