嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「じゃあ、これで終わりにする。
お前ら夏休みだからって気を抜くなよ!」

「はーい!!」


今日は終業式で、明日からは夏休み。
皆は嬉しそうで教室中が騒がしかった。

そんな中で1人俯く私。

理由はただ1つ。

皆と目を合わせない為だ。

“心の声”を聞かない様に。

私は奥歯を噛みしめて机だけを見つめていた。


「……」


そんな私を気にする人はキミだけで。
教室中が騒がしい中で、私たちの周りはいやに静かだった。

正輝が私の方を見ている事は分かる。
でもそっちを向く事が出来ないんだ。

正輝とも、他の人とも。
誰とも目を合わせなくて数日が経った。

他の人とは、元からそんなには関わっていなかったから特に何も変わらない。
正輝にしても、私が目を合わせなくなってからもずっと傍にいてくれる。

本当にいい人で、大好きで。

他のどんな人に嫌われてもいいけれど。

キミだけには嫌われたくないんだ。

だから正輝の目だけは、何があっても絶対に見たくない。

お願いだから嫌わないでっ。
私を気持ち悪いと言わないで。

切実で、儚い。
私のたったひとつの願い。

どうか叶えてください。
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