嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
優しさの花火
締め切った窓。
降り注ぐ日差し。
蝉の鳴き声。

暑苦しい部屋のベッドの上でゴロゴロとしていた。

夏休みに入って。
7月が終わって、あっという間に8月上旬。

終業式以来、私は家に引き籠もっていた。
1歩も外に出なくて。
外部との連絡も一切断ち切って。
家族以外とは話さなくて。
もっと言えば、家族とも目を合わせられなくて。
作った笑顔もすっかりと慣れてしまった。


「……やる事ないな……」


夏休みの宿題はもう終わってしまった。
机の上に乱雑に置かれた勉強道具。
その端にあるのはテストの結果の紙だった。


「はっ……」


そこには見た事も無いほど高得点のオンパレード。
ほぼ90点以上で。
現代文と古典と、日本史と世界史は100点だった。

苦手な英語は89点という快挙を成し遂げた。
それもこれも正輝のお蔭だ。
キミのくれたノートに纏められてあった事はドンピシャでテストへと反映をされていた。
だからこれまでだったら考えられない点数を取れたんだ。

学年順位だって。
お父さんとの約束の10位以内なんて軽くこした。

結果は2位。
あり得ないと、驚いていたけれど。
正輝は当然と言った様に笑っていた。

1位は正輝で。
『俺が教えたんだからそれくらいやって貰わないと』と鼻で笑って言われたけれど。
顔は凄く嬉しそうだった。

お父さんも大喜びで。
家族みんな嬉しそうだった。

私以外は。

私は、この結果を見ても嬉しいとは思わなかった。
だって、あの時も今も。
私の心は壊れているのだから。
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