嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「って結局ココなんだ」

「うるさい、好きでしょココ」

「うん、大好き」


頷いた私にキミも笑顔を返すと2人で一緒に前を向いた。

目の前に広がるのは大きな海。
砂浜で2人で肩を寄せながら座って。
波打つ海を眺める。

私とキミが初めて会った場所。

2回目に偶然に会ってから。
何度も2人でココを訪れた。

別に何をするっていう訳でもないけれど。
今と同じ様にこうやって海を見るんだ。


「和葉はやっぱり笑っていた方がいいね」


気が付けば、キミは私を見ていた。
何とも微笑ましい顔で。
少し恥ずかしくなって全然違う方に顔を背ける。


「もう、何を言って……」

「本当の事だから。
俺、アンタの笑顔大好きだから」

「なっ……!?」


反射的にキミを見てしまう。
咄嗟の事で交じり合った視線をどうにかする事なんて出来なくて。
頭に入ってきた声を受け入れる事しか出来なかった。


「本当に可愛いね(本当に可愛い)」

「っ……!!」


泣きそうになったのは心の声を聞いたからじゃない。
キミが真っ直ぐすぎて、綺麗すぎて。
逃げ出した事さえ馬鹿みたいに思えて。
可笑しくないのに笑いが止まらなくなる。


「は……ははっ……」


乾いた声が波の音と融合をする。
そんな私を見ながらキミは目を細めたんだ。


「泣きたかったら泣いていいよ」


ポンポンと大きな手が私の頭を撫でる。
それはキッカケにすぎなかった。
私はずっと泣きたかったんだ。
キミの腕の中で。

キミを避けていた私の台詞じゃないけれど。
ずっとそれを望んでいたんだ。
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