嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
全てをキミに話した。

生まれつき人の心の声が聞こえるって事。
それは目を合わせたら頭の中に響いてくるって事。

その全てが醜くて、嘘つきで。
絶望をして。
何もかもから逃げ出した。
人と関わる事も、人を理解する事も。
周りに浮かない程度にやって来た。

でも、やっぱり醜い感情を聞いていたくなくて。
1人になりたくて、逃げだしたんだ。
何処を探しても綺麗な場所は無くて。

いつも彷徨い歩いて。
そして、あの時。
ココでキミに出逢ったんだって。

キミは信じられないくらい真っ直ぐで、綺麗で。
私の大嫌いな醜い感情なんて微塵もなくて。

ただ傍にいたいって思った。

キミと過ごした時間は何よりも大切で、楽しくて。
綺麗なキミの隣にいるだけで私までが綺麗になった気がした。

それでも気付いたんだ。

皆からしたら私は異端児で。
『化け物』と呼ばれても仕方がない存在で。
そんな事は知っていたつもりだったのに。

目を合わせる事が出来なくなって。
キミからも逃げ出して。

またずっと1人で。
目を閉じて、耳を塞いで。
何も聞こえない様に閉じこもっていようって思ったけれど。

それでもキミに会いたかった。

全部を伝えた。

私の闇も。
私の想いも。

キミが今、どんな顔をしているかを見るのが怖くて。
ただ海だけを見つめた。

2人で肩を並べて、手を繋いで。

ずっと目を背けていたけれど。
それじゃあ今までと何ひとつ変わらない。

ゴクリと唾を飲みこみゆっくりとキミの方に顔を向けた。
正輝の顔は表情も読み取れないくらいの無表情だった。
でもそれは決して冷たいとは思えなかった。
何となくだけど。
どんな顔をしたらいいか分からない、そんな風に見えたんだ。
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