嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「んっ……」

「あっ……起きた?」


目を開ければキミの笑顔が映った。
一瞬何が何だか分からなくなる。

何で正輝がココにいるの?
何で私たちは海にいるの?

さっきまで寝ていたからか上手く頭が回らなくて。
焦りが私を襲ってくる。

だけど、徐々に昨日の事を思い出す。

そう言えば、昨日は2人で花火を見て。
既に真っ暗になった道を5時間もかけて帰る事も出来ずに。
2人で海にいる事を決めたんだ。

勿論、お互い親には連絡をして。

状況を把握できた私は『ん』と伸びをしながらキミを見つめる。


「ずっと起きてたの?」

「ううん、さっきまで寝てた。
っで少し前に起きてアンタの寝顔を観察してたって訳」

「はい!?」


キミのとんでもない発言に目を丸める事しか出来ない。
何で私の寝顔なんか見るのよ。
起きている時でさえ自信がないのに。
寝顔なんて以ての外だよ。
少し落ち込んでいればキミはフッと頬を緩めた。


「凄く可愛かったよ」

「なっ……!?」

「言っとくけどお世辞は嘘と同じだからね」


キミが言いたい事が分かり一気に頬が熱くなる。
つまり、さっき言った事は嘘じゃない。
本当の事だって念押しをしたんだ。


「そんな事いちいち言わなくてもいいの!」

「だってアンタならお世辞だって騒ぎ立てると思って」

「うっ……」


騒ぎ立てるかどうかは別として。
お世辞以外は考えられないもん、普通は。
でもキミはそう言ってくれる。
キミは少し変わっている、それはいい意味でだけど。
心の中で微笑むと繋いだままだった手を強く握りしめた。

またこうやって2人で居られることに喜びを感じながら。
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