嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「裏切り者のコイツを庇うって事はお前も裏切り者だ!!」

「どうだっていいよ」


男の子たちを掻き分けて進もうとすれば一気に捲し立てられる。


「大体カンニングだって一ノ瀬がでっち上げたんじゃないの?」

「それあり得るよね!目立ちたくてさ!」

「そうそう髪と同じでさ!」


いちいち反応をするのも馬鹿らしくて無視をして通り過ぎようとしたけれど。
誰かの言葉に足を止めた。


「って事は一ノ瀬は嘘つきジャン!」


その言葉に以上に反応をしたのはキミではなくて私だった。
正輝の事を何も知らないくせに好き勝手に言わないでよ。
腹が立って男を軽く睨んだ。


「正輝は嘘なんかつかない!
ふざけた事を言っていると許さないよ」

「し、白石……」

「お前も嘘つきなんじゃね?」


騒ぎ出すクラス。
自分の事を言われてもなんとも思わないけれど。
正輝の事を言われると驚くくらい苛つくんだ。


「ねえ、アンタ達……煩いんだけど」


さっきまで黙っていたキミが私の前に立つ。
それはまるで私を庇っているかの様だった。


「和葉は嘘なんてつかない」

「じゃあお前はどうなんだよ!」

「俺も」

「は?」


正輝の声が小さくて聞こえなかったのか男はワザとらしく耳を傾けている。
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