嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
正輝のお母さんと別れて私はフラフラと歩いていた。
特に目的地を決めていた訳ではないけれど。
私の足はあの海に向かっていた。
正輝がいる保証なんてどこにもないのに。
何故か早足になっていく。

気が付けば走り出していた。

キミに逢いたくて。

足がもつれても。

転びそうになっても。

ただキミに逢いたいんだ。


「正輝っ……待ってて……今行くからっ!!」


息が切れるのも構わずに叫ぶ。
誰もいない、秋の高い空に私の声が吸い込まれていく。

キミが抱えているモノは私が一緒に背負うから。

正輝が私にそう言ってくれた様に。
私だってキミの力になりたいんだ。

爽やかな風が背中を押してくれる。

だからいつもより軽やかに走れる気がした。

ずっと、どこまでも。

キミがいる場所なら何処へだって走っていくよ。

だから1人になろうとしないで。
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