嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「ココはアンタとの思い出がいっぱい詰まっている場所だから。
和葉との思い出を断ち切るにはココしかないって」


切なそうに笑うキミ。
それは本音なんだろうけれど。
でもその裏には何かがある。
だってそうじゃなかったらキミはそんなに哀しそうな顔はしないでしょ?
私は思いっきり空気を吸い込んだ。


「あああー!!」


そして一気に声と一緒に吐き出す。
突然の事で驚いたのかキミは私の方を見ていた。
でも今度は私が海を見つめて喋る番だった。


「そんな話を聞きに来た訳じゃない。
キミが今、何に苦しんでいるのかが知りたいの」

「っ……」


小さな悲鳴がキミから漏れる。
だけど意地っ張りなキミは何も喋ろうとはしなかった。

こんなやり方は汚いって思うけれど。
キミの気持ちが知りたくて。
私は姑息な手段を選んだ。


「私の事が嫌いになった?」

「え……?」

「一緒にいるのが嫌で嫌で。
だから思い出まで全部……捨てようとしているの?」


静かな声のトーンで聞けばキミは泣きそうな声を私に向けたんだ。


「そんな訳ない……」

「ん?」

「嫌いになる訳ない!
俺はアンタと一緒にいたいっ……」


震えるキミの声が胸に突き刺さる。
その言葉は嬉しかったけれど。
まだ私が知りたい事は分かっていない。

ゆっくりと視線を正輝に向ける。

今にも泣きそうなキミの顔。

何がキミをそんな哀しみで苦しめているの?

1人で苦しまなくたっていい。

それをキミが教えてくれたのに。
何でキミは私を頼ってくれないの?
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