嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
教室に入ればジトッとした目で見られる。
私も、正輝も、完全にクラスで浮いた存在になっていた。

今まで普通に話していた人たちも。
有紗ちゃんも由香里ちゃんも。
誰1人として近寄って来なくなった。

だって私と関われば今度は自分が同じ様な目に合うのだから。
それが分かっていて近付く馬鹿はいない。

でも、別に哀しくはない。

だって私には正輝がいるもん。

手を繋いだまま自分の席へと向かう私たち。


「ほら」

「ありがとう!」


正輝は私の鞄を机に置くと自分の席へと座った。
自然に離れた手。
さっきまであった温もりがなくなって少し寂しく思っていれば私の机の前に影が出来る。


「……」


顔を上げればそこにはクラスの中心的な男子5人が立っていた。


「ちょっと来いよ」

「……私……?」

「そうに決まってるだろう!?」


少し怒り気味の男たち。
無理やり私の腕を掴み立たせる。

横を見ればキミは違う人たちに囲まれていて。
私の状況に気が付いていないみたいだ。


「……分かった」

「それでいい」


素直に従う私に満足そうな笑みを浮かべる男たち。
5人の後をついて教室を出た。
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