嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「和葉、早く行こう。付き合いきれない」

「うん」


大袈裟に肩を上げるキミに私も頷く。
このままココにいても意味はないし。
今ので授業を受ける気も失せた。
多分それは正輝も同じだと思う。


「ん」


キミは優しく笑うと私に向かって手のひらを差し出してくる。
もうすっかりと見慣れた光景。
迷う事無くキミの手に自分の手を重ねる。


「じゃあね」


男たちに、反対の手をひらひらと振りながら私の手を引っ張るキミ。
呆然とする男たちの間を堂々と通ってこの場を後にした。


「アンタってさ、危なっかしすぎ」

「そう?」

「うん、目が離せない」

「……じゃあ離さないでよ」


ぎゅっと繋いでいた手を握った。
キミは前まで私を離そうとした。
私を危ない目に合わせたくないからって、1人で闘おうとしていた。
だけど、そんなのは嫌だ。
私だって闘いたいんだ、キミと2人で。
そう想いを込めて見つめればタメ息を返された。


「……本当にアンタには敵わない」

「……それは褒め言葉?」

「うん」

「そう、だったら、ありがとう!」


にっと笑えばキミも笑ってくれる。
ずっと2人でいたい、そう思えるのは相手が正輝だからなんだ。
他の人になら絶対に抱かない感情を。
初めての想いをキミに持っているんだ。
< 157 / 336 >

この作品をシェア

pagetop