嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「和葉……泊まるってまさかココに……?」

「……うん!」

「……アンタ何考えてるの?」


深くタメ息を吐きながら正輝は頭を抱えた。
それを見ながらにっと笑う。
私たちは全ての荷物を持ち教室を後にした。
それから向かったのが学校の外ではなく、屋上だ。
いつもの定位置に座りながら2人で肩を並べる。

すっかりと暗くなった辺り。
少し怖い気もするけれど、キミと2人なら大丈夫。
そんな能天気な事を考えながら空を見上げた。

星が出始めた真っ暗な空。
建物の灯りは上を見れば目に入って来なくて。
綺麗な夜空だけが視界いっぱいに映る。


「今日はココに用があって」

「用って?」

「それはまだ内緒!」


ワザとらしく笑えばキミはもう1度タメ息を吐いた。
でも、すぐに寝転がって空を見上げる。

彼のこういう所が好きだ。
どんなに呆れても、最後は私と一緒にいてくれる。
そんなキミの優しさが温かくて心地が良い。


「でもさ風邪引かない?」


キミが言う事も尤もだった。
11月に入ったばかりとはいえ、肌寒いし。
このまま寝たら風邪を引くだろう。
でも、私だって抜かりはない。
ニヤリと笑って大きい鞄を開く。


「じゃじゃーん!」

「そ、それって……」


目を丸めるキミに笑いながらある物を見せびらかす。
赤色と青色の2つのもの。
青色の方をキミに渡せば呆れた様に笑った。


「やっぱり……寝袋じゃん」

「正解!」

「……正解!じゃないでしょ。アンタって本当に変わってる」


寝転びながらキミは空を見上げていた。
ずっと遠くの空を。
でも不思議なんだ。
キミとならあの空にまで手が届くんじゃないかって。
そんな事は絶対に無理なのに手を伸ばさずにはいられない。
右手を空高く上げればいきなり私の視界は反転したんだ。
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