嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
暫く時間が経って、私たちは遅めの夜ご飯を食べた。
予め私が用意してきたパン。
夜ご飯にしては少し味気がなかったけれど。
2人で食べれば何でも美味しく感じるんだ。

そして今は2人で座って話していた。
地面に置かれた私の手にキミの手は重なっていて。
少し照れ臭かったけれど気にせずに話し続ける。


「ねえ、そろそろ教えてくれない?」

「なにが?」

「なにがって……ココに用事があるんでしょ?
もうすぐ12時を回りそうだけど……」


呆れた顔をするキミ。
でも私は何も言わずに笑った。
12時を過ぎるまでは言えないんだ。
ぎゅっ唇を結んで、その両端を上げる。


「ナイショ」

「……」


ジットとした視線を向けられるけれど。
気にせずに正輝を見つめた。


「色々考えたけど。
キミが1番喜ぶ事をしたかった」

「え?」

「まあ、喜んでくれるかは分からないけど」


キミは頭にハテナを浮かべながら首を傾げていた。
その顔も可愛いな、なんて考えていれば静かな空間に軽快な音楽が鳴った。
正輝は驚いていたけど、私は知っていたからそんなには驚かずに済んだ。
スマホを手に取ってアラームを止めて、時間を見つめれば11時59分と時間が刻み込まれている。


「よっし」

「え?」

「いやいや、こっちの話」


計画通りに物事が進んだからか安心して声を漏らしていたらしい。
慌てて首を横に振りながら空を見上げる。
正輝もつられて私と同じ様に顔を上げた。


「10、9、8……」

「え……?」


いきなり始まったカウントダウンに慌てる正輝。
私は気にせず数字を唇にのせる。


「5、4……」

「和葉……?」


こっちを向くキミに笑みを浮かべて空を指さした。


「3、2、1!!」


私の言葉が途切れた瞬間に真っ暗だった空に鮮やかな色が浮かび上がったんだ。
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