嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「あっ……」
キミは目を丸めて小さく声を漏らす。
よっぽど驚いたのかポカンと口を開いたまま固まっていた。
私も正輝と同じ場所に視線を向ける。
次々に夜空に浮かび上がるのは大輪の花。
夏の風物詩と呼ばれる花火が11月の夜空に咲き誇っているんだ。
夏とは違って音はないけれど。
綺麗な事に変わりはなかった。
「どう……して……?」
花火から目を逸らさずにキミは呟いた。
それは私に向けられた言葉だという事は容易に分かる。
「んー?何が……?」
「何で花火が……」
まあ、花火は夏のイメージが強いしね。
驚くのも無理はない。
遮る物が何もなく大きく咲き誇る花を見ながらにっと口角を上げる。
「学校の不思議伝説、その2」
「へ?」
「11月3日に変わるその瞬間、大空に大輪の花が咲く。
……屋上から見られるんだって」
「……それを確認した事は?」
「ない!
ちなみに誰かが見たって噂もない!
本当に伝説化となってるんだー」
笑いながら花火を見上げる。
でも、伝説なんかじゃなかった。
音もないから気が付かないだけで。
11月3日のこの時間はずっと夜空を優しく包み込んでたんだと思う。
「……本当に……アンタは馬鹿だよ」
「……嫌い?」
「いーや……嫌いな訳ないでしょ?」
「ふふっ、知ってる!」
キミに笑顔を向けて、すぐに視線を外す。
だって正輝の顔があまりにも優しくて。
心臓がおかしくなると思ったから。
「ちょっとこっち見てよ」
「だ、だめ……今忙しい!」
「ちょっと何それ。
その嘘は好きじゃないなー」
キミはからかう様にそっと私の頬に手をあてる。
恐らく自分の方に向けようとしているのだろう。
でも、私は必死に抵抗をした。
だって今キミの顔を見たら。
私はきっとおかしくなるから。
「よっと」
そんな私の気持ちなんて知らないキミは優しく私の顔を自分と向き合わせた。
その瞬間、キミの顔から笑顔が消えた。
「(なに……その顔……反則だって……)」
頭の中に響いたその声。
キミに理由を問おうと思ったけれど私の口からは言葉が出る事はなかった。
キミは目を丸めて小さく声を漏らす。
よっぽど驚いたのかポカンと口を開いたまま固まっていた。
私も正輝と同じ場所に視線を向ける。
次々に夜空に浮かび上がるのは大輪の花。
夏の風物詩と呼ばれる花火が11月の夜空に咲き誇っているんだ。
夏とは違って音はないけれど。
綺麗な事に変わりはなかった。
「どう……して……?」
花火から目を逸らさずにキミは呟いた。
それは私に向けられた言葉だという事は容易に分かる。
「んー?何が……?」
「何で花火が……」
まあ、花火は夏のイメージが強いしね。
驚くのも無理はない。
遮る物が何もなく大きく咲き誇る花を見ながらにっと口角を上げる。
「学校の不思議伝説、その2」
「へ?」
「11月3日に変わるその瞬間、大空に大輪の花が咲く。
……屋上から見られるんだって」
「……それを確認した事は?」
「ない!
ちなみに誰かが見たって噂もない!
本当に伝説化となってるんだー」
笑いながら花火を見上げる。
でも、伝説なんかじゃなかった。
音もないから気が付かないだけで。
11月3日のこの時間はずっと夜空を優しく包み込んでたんだと思う。
「……本当に……アンタは馬鹿だよ」
「……嫌い?」
「いーや……嫌いな訳ないでしょ?」
「ふふっ、知ってる!」
キミに笑顔を向けて、すぐに視線を外す。
だって正輝の顔があまりにも優しくて。
心臓がおかしくなると思ったから。
「ちょっとこっち見てよ」
「だ、だめ……今忙しい!」
「ちょっと何それ。
その嘘は好きじゃないなー」
キミはからかう様にそっと私の頬に手をあてる。
恐らく自分の方に向けようとしているのだろう。
でも、私は必死に抵抗をした。
だって今キミの顔を見たら。
私はきっとおかしくなるから。
「よっと」
そんな私の気持ちなんて知らないキミは優しく私の顔を自分と向き合わせた。
その瞬間、キミの顔から笑顔が消えた。
「(なに……その顔……反則だって……)」
頭の中に響いたその声。
キミに理由を問おうと思ったけれど私の口からは言葉が出る事はなかった。