嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「ったくそんな言い方ないだろう?
コイツはちょっと不器用な奴だけど仲良くしてやってくれ!」

「はーい!」


佐藤先生に返事を返すのは格好良いと騒いでいた女子たちだけ。
他の人は鋭い目で、不審そうな目で、彼を見ていた。


「何か質問あるか?」


手を上げるのもさっき同様のメンバーだ。


「好きな食べ物は何ですか?」

「……唐揚げ」

「彼女いますか?」

「……いない」

「好きなタイプは?」

「……煩くない人」


次々とされる質問。
でも男の子はちゃんと答えていた。

さっきからの態度だと、答えるなんて微塵も思っていなくて。
女子たちは大騒ぎだった。

男子たちは面白くなさそうに顔を歪めている。


「先生ー何で一ノ瀬君は茶髪なんですかー?」


からかう様に1人の男子が男の子を見ていた。
それに乗っかる様に他の男子も口を開く。


「校則違反じゃーん!」

「不良じゃね?」

「こわーい!!」


男子たちはふざける様に盛り上がっていた。

男子たちの言う通り、この学校は髪を染めちゃいけないと校則で決まっていた。
でも、前に立つ男の子の髪の毛は明るめの茶色で。
生まれつきなのかもと思ったけれど、佐藤先生の慌て振りが違うと表していた。


「そ、それは……学校とはもう話がついているからいいんだ。
お前らも髪の事で一ノ瀬をからかったり、はぶいたりするんじゃないぞ!」


そんな答えで納得する訳もなく男子たちはブツブツと文句を言っていたけれど。
佐藤先生は男の子を見ながら私の方に指をさしていた。
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