嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
サヨナラ愛しいキミ
冬の日差しは何だか切ない。
そう感じるのは私だけだろうか。
目の前に広がる大きな海を見ながら小さくタメ息を吐いた。


12月24日。

今日はクリスマスイブで。
本当なら今頃、正輝と一緒に過ごしているんだろう。

だけど、私の隣にキミはいないんだ。

あの日、教室で。
キミから離れたあの日から。
私は正輝と喋る事はしなかった。

一緒に学校に行く事も帰る事もやめて。
屋上で一緒に過ごす事もやめて。

キミとの時間を抹消した。

そんな事を正輝が許す訳なく。
何度も話し掛けてくれた。

でも、その度にキミに嘘をついて引き離したんだ。


「っ……ただ……正輝を守りたかっただけなのにっ……」


私はキミの笑顔が見たいだけ。
傷ついたり、苦しんだりして欲しくないだけ。

それなのに私は正輝の辛そうな顔を見る事しか出来ないんだ。


「もう……いやだっ……」


顔を両手で覆ってキミを想う。

正輝の笑顔を最後に見たのはいつだっただろうか。
そんなには遠くないはずなのに。
キミの笑顔が凄く懐かしくて。
いつだってその笑顔を感じていたいんだ。

勝手に離れたくせに。
正輝を傷付けているのは私なのに。

そんな事を言う資格はないけれど。
そう思わずにはいられなかった。


「……ああ、まただ……」


ポツリと呟けば、頭の中を一気に駆け巡る沢山の声。


「(クリスマスデートとか面倒)」

「(あー何でこんな奴と付き合っているんだろ)」

「(クリスマスイブに仕事って虚しすぎる……)」


まるでBGMを聞いているみたいに。
私の心は何も動かなかった。
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