嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
もう、どうだっていい。

私だって嬉しいから。

キミの隣にいられる事が。
キミの手の温もりを感じられる事が。

2人でなら。
何処へ行ったって。

生きていたって、死んでいたって。

そんな事は大差はなくて。

正輝と一緒にいられるのなら。
私は喜んで死ぬ。


「……」

「……」


黙ったまま歩き続ける。
私たちの手はしっかりと繋がれていた。
どんな事があっても離れてしまわない様に強く。

もう、死ぬ事を覚悟した。

キミには申し訳ないけど。
こんな形で命を奪うのは忍びないけれど。

私の為に、死んで。

もうそれ以外何も考えられなくて。
私は可笑しくなっていたんだ。

足の半分くらいまで水に入った時だった。


「和葉」


キミが私の名前を呼んだんだ。
優しいその声に、隣を向けば、目を細めたキミの顔が目に映る。


「アンタに逢えて良かった」


穏やかな顔を見た瞬間、私はハッとした様に目を見開いた。

それと同時にキミと過ごした時間が一気に頭を横切った。
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