嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
『ココはアンタとの思い出がいっぱい詰まっている場所だから。
和葉との思い出を断ち切るにはココしかないって』


優しいキミだから、私を守ろうと必死で歯を食いしばってくれた。


『嫌いになる訳ない!
俺はアンタと一緒にいたいっ……』


揺れ動く感情の中で、悩んで、もがいて。


『和葉、俺の事はいいから放って置け。
……俺に関わるな……』


それでも私を守る為に。
私の手を離したんだ。

でも。


『ったく、アンタには敵わないよ』

『これ以上放って置くと危ない事をしそうだから。
……俺の隣にいてよ、ちゃんと』


何度だってキミは私の手を握ってくれた。


『この子に手を出したらただじゃおかないから』


その真っ直ぐな優しさで、私の心を覆う真っ暗な闇を明るく照らしてくれた。


『でも俺は綺麗なんかじゃないよ』

『ただの病気だから。
事故に合ってなかったら俺はアンタの嫌いな嘘つきだよ。
俺は綺麗なんかじゃない……醜いんだ……。
そんな俺がアンタの傍にいていいのか悩んだけど、でも、和葉の傍にいたいんだ』


だからこそ私も。
キミの為に何かをしたいって思ったんだ。

キミの闇も、苦しみも、私が一緒に背負うって。
そう心に誓った。


『ねえ、嘘だって分かってても……。
俺だって傷つくんだよ。
だからもう止めてよ。
アンタの口からちゃんと言ってよ』


でも結局私はキミを傷付ける事しか出来なくて。
何度も何度も過ちを犯したんだ。

離さないと誓ったキミの手を。
1人にしないと胸に刻んだ想いを。

いとも簡単に破ってしまった。
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