嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「……ないっ……」

「……和葉……?」


絞り出すように呟いた言葉。
小さすぎてキミには届いていないみたいだ。
不思議そうに私を見る正輝。
でも、その顔は優しく緩んでいた。


「死にたくないっ……!!」


もう考えるまでもなかった。
叫ぶように自分の気持ちを解き放つ。

さっきまでは死にたかった。
こんな世界では生きたくなかった。
もう、限界だった。

その気持ちには偽りはなかった。

それでも。


「死にたくないのっ……」


馬鹿みたいに同じ言葉を繰り返す。

震える体、溢れ出す涙。

今、自分がどんな感情を抱いているかとか、よく分からないけれど。
そんな事はもうどうだっていい。


「キミと……正輝と……。
……一緒に生きたいっ……」


その気持ちだけが分かっていれば、それでいい。


「……そっか、分かった」


素っ気ないキミの言葉。
でも、相変わらずの笑顔で私を見ていた。
握りしめる手のひらがぎゅっと強くなった。


「正輝……」

「じゃあ、行こうか」

「……うん」


キミは何も聞かなかった。
でも、しっかりと私の手を繋いだまま今来た道を戻って行く。
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