嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
キミの温もり
すっかりと落ち着きを取り戻した私たち。
砂浜で2人で肩を並べながらいつもと同じ様に他愛のない話をしていた。


「っで?そろそろ話してくれる?
……アンタが抱えてるモノを」


聞かれるとは思っていたけれど、こんなに唐突に来るとは思わなかった。
苦笑いを浮かべながらも私はコクリと頷く。

キミに隠し事なんて、もうしたくない。
大好きなキミに、大嫌いな嘘をつき続けていたくない。

そう思った私は全てをキミに話したんだ。

正輝のお兄さんの事も。
目を合わせなくても聞こえてくる心の声も。
お兄ちゃんの事も。

あれほど話す事を躊躇ったのに。
キミを目の前にしたらすんなりと言葉が出てくるんだ。

お兄さんの事は、言いにくかったけれど。
それでも、キミに話さなければいけない。

もし、傷ついたとしても。
私が隣でキミを支えるから。

だから。

強く決意をしていれば盛大なタメ息が聞こえてきた。

キミを見れば眉を顰めて哀しそうな顔をしていた。
胸が痛むけれど、砂浜に置かれっぱなしの正輝の手をぎゅっと握った。


「大丈夫だよ正輝。
お兄さんは今、悩んでるだけだから。
本当は正輝の事……」

「……そんな事はどうだっていいよ」


ポツリと呟いた正輝を呆然と見上げる。


「え……?」


『どうだっていい』って。
信じられなくて目を丸める事しか出来なかった。

だって辛いからそんな哀しい顔をしているんじゃないの?
大好きなお兄さんの本当の顔を知って苦しいんじゃないの?

訳が分からなくて瞬きを繰り返していればもう1度盛大なタメ息を吐かれた。
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