嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「私さ……」

「……ん?」


ポツリと呟けば正輝は首を傾げた。
キミの目を見つめながら小さく微笑んで喋り続ける。


「世界に取り残された様な気分だったんだ」

「……」


顔は笑顔だったけど、情けない声が出た。
どちらかが偽りな感情な訳ではない。
両方とも、私の本当の気持ちだ。
キミは黙ったまま私の顔を見ていた。


「私だけが心の声が聞こえる。
皆は綺麗な部分だけを見ているのに、私は汚い部分しか見る事が出来ない。
誰にも必要とされていなくて、生きている意味も分からなくて。
そんな私はこの世界でたった1人。
……1人ぼっちだって思ってた」


いつも、いつも。
私の耳には誰かの心の声が聞こえていた。
ほとんどが醜くて、目を閉じて聞かない様にしていた。

でも、キミが現れてからは違った。

目を塞がなくたって。
キミの傍にいればどんなものでも綺麗に映る。

醜い声もキミからは全く聞こえなくて。
一緒にいれば、楽しくて仕方がなかった。


「あのさ」

「え?」

「何か勘違いしていない?」

「勘違い?」


考えるけれど、よく分からなくて。
苦笑いをすれば、正輝は小さく頷いた。


「うん。
アンタは誰にも必要とされていないって言ったけど……」

「うん……」

「周りがアンタを必要としていないんじゃなくて。
アンタが周りを必要としていないんじゃない?」

「えっ……」


正輝の言葉に思わず目を見開いた。
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