嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「和葉は、誰かに心の声の事を相談しようとした?」

「……ううん、お兄ちゃんと正輝以外には誰にも……」


フルフルと首を横に振る。


「どうして?」

「……だって知られたら……気味悪がられるから。
“化け物”って言われるかもしれない」


自分で言って自分で傷ついていれば、キミは深くタメ息を吐いた。
そして、パチンとオデコを叩かれた。


「痛ッ……」


驚いていればキミは呆れた様な顔をしていた。
腕を組みながらジトッとした目で私を見ている。


「ほら、アンタはそうやって思い込んで自分1人で抱え込み過ぎ。
和葉が周りを信用していないから、必要としていないから。
周りだってアンタを必要としないんじゃないの?」

「私が必要としていない……」

「うん、自分が必要としていないのに相手には必要されたいなんて。
……ちょっとムシが良過ぎなんじゃない?」


キミの言葉に瞬きを繰り返す。

そんな風に考えた事なんてなかった。

確かに、キミの言う通りなのかもしれない。

そんなムシの良い話はないよね。


「……」


何も言えずにいれば、いきなりキミの手が私の頭にのった。


「まあ、醜い感情だらけの人間を信用しろって方がおかしいけどね」

「正輝……」

「アンタはアンタの信じたい人を信じればいい」

「……うん」


コクンと頷けばキミは柔らかく笑った。


「俺はアンタにとって必要な人間?」

「……うん、勿論」

「……そっか。
俺にとってもアンタは必要な人間だよ」


優しく笑うキミ。
私も一緒になって笑った。
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