嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「さて……これからどこか行く?」

「え?」

「約束したでしょ?クリスマスを一緒に過ごすって」


キミの柔らかい笑顔が私に向けられる。

そうだった。
2人で約束したんだ。
勿論、一緒にいたかった。


「うん!」


元気よく頷いた次の瞬間。
クシュンと小さなクシャミが出た。


「……忘れてたけどさ……」

「……うん……」


多分、私たちは同じ事を考えていると思う。

同時に自分の体を抱きしめると2人揃って同じ言葉を口にする。


「寒いっ!!」

「寒いっ!!」


そう。

今日は12月24日。
冬の寒い時期で……。

そんな日に海に入った私たち。

勿論体はずぶ濡れで。

寒くない訳がなかった。

今の今までは興奮をしていたから寒さを感じなかったけど。
冷静になった今、寒さが身に沁みるんだ。


「このままじゃ風邪を引くね……」

「……うん、少なくても5時間は掛かるからね」


この海から家までの距離を恨んだのは初めてだった。

2人で身を寄せ合って少しでも暖を取る。


「んー……あっ……」


キミは何かを思い出した様に声を上げた。
そしてすぐにスマホを取り出してどこかに電話を掛け始める。
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