嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「嫉妬をしているの?」

「なっ……!?」


一気に真っ赤になるキミの顔。
どうやら図星の様だ。
やっぱり正輝は私に嫉妬をしていたんだ。
先生と仲良くする私に。


「もう!心配しなくても先生は正輝の先生でしょ!?」

「……は?」

「いや、だから。
私は正輝から先生を取ろうなんて思ってもいないから安心してよ!」


ニカッと歯を見せて笑う。

何だかんだ言っても、正輝もまだ子供なんだな。
先生を取られて嫉妬をするとか。
まあ、それだけ正輝が先生を信頼しているって事か。
そう思えば嬉しい反面、寂しい気持ちも胸に溢れていく。


「……あのさ」

「え?」

「アンタって馬鹿なの?」

「……へ?」


いきなり失礼な発言をするキミを見ながらポカンと口を開ける。
正輝は頭を抱えながら小さくタメ息を吐いていた。


「何で俺がアンタに嫉妬しなきゃいけない訳?
先生を取られたって何とも思わないし」


タメ息交じりに言うキミ。
首を傾げれば何故か顔を真っ赤に染めて私を睨んでくる。


「正輝?」

「あーもう。
確かに俺は、先生とアンタが喋ってる事に嫉妬した。
しかもあんなに近い距離で肩まで組まれちゃって」

「う、うん……」


グイッと顔を近付けながらマシンガントークをする正輝。
私は頷きながら正輝を見る。


「だけど嫉妬したのは……アンタじゃなくて……先生の方だよ」


小さすぎたその言葉。
でも、熱くなる私の顔が証明していた。
その言葉が届いたという事を。
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