嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「さーて、話が纏まったみたいだからパーティーでもしようか!」

「パーティー?」


先生の言葉に首を傾げれば、彼はニカッと笑いながら白い袋を目の前に掲げる。


「クリスマスパーティーだよ!3人でパーッとやろう!」


そう言いながらテーブルに次々と何かを並べていく。
あっという間にいっぱいになったスペース。
そこには、オードブルや、チキン、お寿司、ケーキといったクリスマスらしい御馳走が並んでいた。
絶対に3人で食べ切れる量じゃない。
呆然としていれば先生は私の目の前で手を動かした。


「和葉ちゃーん?」

「……え?」

「早く座って座って!」


先生は自分の隣をポンポンと叩く。
戸惑いながらもそっちに向かおうとしたけれど、急に腕を引っ張られる。


「わっ!?」


バランスを崩した私を優しく何かが抱きしめてくれる。
鼻を掠めるのは私の大好きな香り。


「ま、正輝……?」


気が付けば私は正輝の膝の上にのるような形で抱き留められていた。


「アンタはこっち」

「……わ、分かったから……!」


急いで立ち上がって正輝の隣に移動をする。
それを見て満足そうに笑うと私の頭を優しく撫でた。


「よく出来ました」


その笑顔に何も言えなくなっていれば、目の前で呆れた顔をしながら笑う先生がゴホンと咳払いをした。


「もう分かったから、イチャつくな。
……独身の俺に見せつけるなよ」


盛大なタメ息を吐きながら肩を竦める先生に正輝は笑顔を向けた。


「ドンマイ」

「……ブッ飛ばすぞ?」


あながち冗談ではなさそうに言う先生。
そんな2人を見ながら笑っていれば、正輝たちも笑い出す。


「メリークリスマス!」


3人だけの小さな、でも、温かいクリスマスパーティーが始まった。
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