嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
『証明してあげる』
新年を迎え、冬休みもあっという間に終わってしまった。

始業式の今日。
玄関を出れば当たり前の様にキミは私を待ってくれていた。


「正輝!!」


鍵を閉める時間ももどかしい。
急いで済ませて、私はキミの元へと駆け寄った。


「ん、会いたかった」


ストレートなキミの言葉。
もう慣れたはずななのにいつまでたっても恥ずかしい。


「昨日も会ったじゃん!」


そう言いながらも、心の中は温かくなる。

私と正輝は休みの日であろうが、なかろうが。
毎日、同じ時間を過ごした。
時には海で、時にはお互いの家で。
2人でどこかへ遊びにいく事もある。
これだけ一緒にいるのに飽きる事なんてないんだ。


「それでも足りないから」


クスリと笑うと、キミは私の手を握りしめてくる。


「……」


当たり前のように手を繋ぐ私たち。
ついこの間までは、この手を離そうとしたのに。
今ではそんな事は考えたくもない。
ぎゅっと握り返せば正輝も力を籠める。


「さっ、行こうか」

「うん!」


頷いたと同時に私たちは笑い合う。
またこうして2人で学校に行けるなんて思ってもいなかった。

自分から離れたくせに。
今は凄く後悔をしているんだ。

一瞬でもこの手を離した事を。
正輝を傷付けた事を。

でも、もう大丈夫。
2人の手は離れないから。

何があっても離さないから。

にっと口角を上げて私は走りだした。


「ちょっ……いきなりどうしたの?」

「んー走りたい気分なの!」


繋がったままの手。
必然と正輝も走る事になる訳で。
私たちは2人で走ったんだ。

見なくても正輝が今どんな顔をしているのかは分かる。
多分、呆れた顔をしているのだろう。
でも。


「……しょうがないな……」


それでも優しく笑ってくれるんだ。
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