嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
先生に詳しい事を聞かれた私は教室であった事を全て話した。
泣きながらだったから、何を言っているか分からなかったかもしれない。
でも、先生はちゃんと最後まで聞いてくれた。


「私が……ちゃんと止めてれば……正輝はっ……」


後悔なんて言葉はもう言いたくもない。
だけど、それしかなかった。

震える体、熱くなる瞳、痺れる脳。

もう何も考えたくなくて、でも考えてしまう。
どうしようもなくて、叫びたくて、叫べなくて。

訳の分からない気持ちを必死で押し殺して正輝を見つめる。

相変わらずの穏やかな顔。
とても苦しんでいる様には見えないのに。
正輝は目を覚ましてはくれない。


「正輝……ごめっ……」

「和葉ちゃん、ごめんは言っちゃ駄目だよ」


先生の少し厳しい声が私の言葉を遮った。
そして、私の肩を両手で掴むと自分の方に体ごと向けた。


「正輝クンは自分の想いを貫いたんだ。
それを、君が受け止めないでどうするんだ」

「でもっ……」

「正輝クンの、正輝クンなりの命がけの告白を、君はごめんで片付けるのか?」


命がけの告白。

その言葉は素直に受け取れない。


「あんなの……告白なんかじゃない……。
苦しんで伝えられたって……嬉しくなんか……」


思い出すだけで、それだけで涙が止まらない。


『……俺は……和葉に惚れてなんかいない……。
アンタなんて……大嫌いだよ……』


あの優しい声も、顔も。
正輝の全てが頭から離れていかない。

キミが苦しんでまで伝えたかった想いが、何で私の心を苦しめるのよ。

大好きなキミの笑顔をあんな形で見たくなんかなかったのに。

考えれば考えるほど涙が出てくる。
声を押し殺して、唇を噛みしめて泣いていればポツリと小さな声が落とされたんだ。
< 271 / 336 >

この作品をシェア

pagetop