嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
住宅街を重たい足取りで歩き続ける。

夕方で、時間も時間だったから。
チラホラと人は通るけれど。
皆私を見た瞬間、ギョッとしたように目を逸らすんだ。

それもそうだろう。
私の顔は涙でぐちゃぐちゃなのに。
溢れ出す涙を拭う事もせずに、ただ歩き続けていたから。


「……」


普段だったら気に病む心の声も。
頭の中に響くけれど、何も感じなかった。


「まさ……き……」


考えるのはキミの事だけで。
思い浮かぶのもキミの顔だけで。
もう笑う事も出来なくなっていた。

重たい足取りはいつまで経っても変わらなくて。
何も無い所で躓いてしまう。

手を前に出す気力もなく。
顔も体もアスファルトに打ち付けられた。

鈍い痛みが走るけれど。
もうそれさえもどうだって良かった。

なんとか体を起こして、道の真ん中に座り込む。

ヒソヒソと誰かの話し声や視線が向けられたけれど。
何も思わなかった。

ただ、ギュウッと心臓が痛くなる。

もう駄目だった。

自分でも分かるくらいに、心が壊れていく。


「あっ……」


最初は小さな声だったけれど。


「ああっ……」


次第に大きくなっていく。
感情が抑えきれなくなって。
自分ではどうしようも出来なくて。


「あああぁぁぁ!!」


ただ叫ぶしか、泣き喚くしか出来かなかった。
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