嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「白石……お前は……」

「おいっ白石……テメェよくも……。
嘘つきの分際で……」

「嘘つき……?」

「お前も一ノ瀬も嘘つきじゃねぇか。
心の声が聞こえる?嘘ついたら死ぬ?
本当にくだらねぇ嘘だな……」


ケラケラと笑う加藤くん。
それに続く様にクラスメートも笑っていた。
でもその笑いは本物じゃない。


「(加藤に逆らうと俺たちまで狙われる)」

「(ごめん白石)」

「(死ぬかどうかはともかく、一ノ瀬の反応はマジだったよな……)」


沢山の声が頭に響き渡った。

皆の本当の気持ち。
それは表に出る事はなかった。
だって皆、加藤くんを恐れているから。
だから、思っていても言えないんだ。


「……本当に嘘だと思ってるの?」

「ああ、なあ?皆?」


加藤くんが皆を見渡す。
その目は狂気じみていて、寒気を感じるくらいのモノだった。


「(ごめん……ごめん)」

「(俺は巻き込まれるのはごめんだ)」


ぱたりと止んだ心の声。
でもすぐに沢山の声が教室中を響き渡っていた。


「どうせアイツの自作自演だろ?」

「そうだよな!嘘をつくと死ぬ病気なんてある訳ないし」


彼らの笑い声がいやに大きく醜く聞こえたんだ。
心でどう思っても、言葉で正反対の事を口に出せば。
それは醜いんだって身に染みて分かったんだ。
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