嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「わ、私の勘違いかな?
それよりお弁当食べよう!お腹すいちゃった!」


正輝の曇った表情を見ていたくなくて。
大袈裟なくらいに口角を上げた。

鼻歌交じりに自分のお弁当箱を開ける。


「あっ……」


思わず声を出してしまうほど驚く私。
引き攣った唇がプルプルと震えだしていく。


「……悲惨な事になってるね」


ボソリと呟いたのは正輝だ。
さっきまでの表情とはうって変わって普段通りの彼。
それに安心しながらも『あはは』と苦笑いを浮かべた。


「ココに来る途中でこの袋を振り回したからだ……」


全速力で走ってお弁当が無事な訳がない。
蓋に米粒やらオカズの欠片やら色んなものがついていて。
ご飯のコーナーとオカズのコーナーの境目が分からなくなるくらいにグチャグチャになっていた。


「何してんのアンタ」

「本当……何してるんだろうね……」

「和葉……」

「なーんてね!さっ食べよう!」

「食べるのそれ?」

「勿論!残すなんて勿体ないじゃん!
それに普通に食べられるし!」


ニッと笑えば正輝はハァとタメ息を吐いて私を見た。


「本当に変わった子だね、アンタって」

「変わった子って何よ!」

「そのまんまの意味」


ニカリと笑みを浮かべる正輝を横目で見ながら私も笑みを浮かべた。
ちょっとした言い合い。
それでも正輝となら楽しいって感じるんだ。
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