嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
キミが命がけで証明をしようとしてくれたのに。
この人たちには全く通じていないみたい。
私を守ろうとしてくれたのに、ごめん。

ぎゅっと目を瞑って深呼吸を繰り返す。

もういいじゃない。
この際、どうなっても。

そう思って私は目を見開いて口角を上げた。

多分、不気味な笑顔をしているだろう。

加藤くんもクラスメートも一瞬だけ息を呑んだ。
静かになった空間で私は小さく呟く。


「あなた達のちっぽけな常識だけで物事を判断しないでよ。
この世界にはね、あなた達にとっては考えられない、想像も出来ない事があるの」


私だけ、聞いていればいい、そう思った。
醜くて、汚い部分を聞くのは私だけで十分だって。
苦しかったけど、辛かったけど。
必死で耐えてきた。
だけど。


「あなた達にも教えてあげる。
……醜い世界を……」


ニタリと笑った。

もうどうだっていい。

化け物だと言われようが、誰かが傷つこうが。

もうどうだって良かった。


「白石……?」

「山本くんごめんね。
気持ち悪いものを見せちゃうけど……」


心配そうに顔を顰める山本くんには申し訳なかった。
だって、彼の心は綺麗になりつつあったから。
だから巻き込んでごめん。
心で謝ってクラスメートを睨みつけた。


「まずは……。
『あーあ……こんな騒ぎ面倒くさい。
皆馬鹿なんだから勉強でもしてろよっ……』」


笑いながらそう言えば1人の男の子はびくりと肩を揺らした。
まあ、そうだろう。
だって心の声をそのまま口に出したんだから。
他の人は首を傾げていたけれど。
でも、すぐに分かるから大丈夫。
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