嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「次は……。
『皆を脅しやがって。加藤なんて死んじまえばいいのに』」


過激な言葉だったけれど、躊躇わずに口に出す。
他の事を考える余裕なんてなかった。
ただ、知らしめたかった。

正輝や私の様な人間がこの世にいるという事を。
キミが苦しんできたという事を。
自分達がいかに綺麗な世界にいたかという事を。


「『……って言うか……皆、加藤の事なんて嫌いなのに粋がってんじゃねぇぞ』」


沢山の言葉を口にしていく。

誰の言葉かを言わなかったのはせめてもの情けだった。
だって、このクラスが揉める事なんて別に望んでいないし。
多少は思う所はあるだろうけれど、誰が言ったかを知るよりは幸せだろう。


「これで最後かな……。
あー……皆の反応で分かっちゃったか……。
ねえ、加藤くん?」


まだ言っていないのは山本くんと加藤くんだけだ。
山本くんの心の声は言うつもりはない。
だけど、加藤くんのやつはちゃんと言うよ。
真っ青な顔をしながら震える加藤くんを見ながら口角を上げる。


「あー2個あるね。
まずは1個目『お前ら全員、ぶっ殺す』」


それを聞いた瞬間、クラスメートは震えあがっていた。
でも、フォローの言葉なんて一切入れずに口を開く。


「2個目は……あーこれは……山本くん以外、皆思っているみたい」


皆から聞こえてくる心の声にズキリと胸が痛んだ。
でも、口を閉ざすことなく、最後の心の声を口に出した。


「『白石 和葉は……化け物だ……』」


頭の中に響くその言葉は。
私が何よりも恐れていたモノだった。

この言葉が聞きたくなくて。
必死に心の声の事を隠してきた。

だけど……。
何でだろう……。

思っていたより全然、胸の痛みが少なかった。
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