嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「自分の気持ちを隠す事は大切な事だと思う。
皆が皆、正直に全部を曝け出したらこの世界はハチャメチャになると思うし、絶対に上手くいきっこない。
だけどね、本心を隠して、その代わりに得たモノは所詮、偽りのモノだよ。
周りを見て見なよ。
あなた達自身が、本音を言える人ってどれだけいる?」


私の言葉にクラスメート達はお互いの顔を見つめて哀しそうにしていた。
それでも私は止まる事なく話し出す。


「友情だって、愛情だって、家族だって。
偽りになっちゃう事もあるんだよ?
私は……そういう人を沢山見てきてし……。
私自身も……そうだからっ……。
こんな事を私が言える立場じゃないけど。
もっと素直に生きたら?
そうすればきっと、大切なモノが見えてくる。
今までの苦しみが嘘みたいに軽くなるから!」


にっと笑いながら私は山本くんを見つめた。


「このクラスで1番初めにそれが出来たのは山本くんだね。
凄く勇気がいったよね?辛くて苦しかったよね?
だけど、真っ直ぐに向き合った山本くんは格好良かった。
眩しいくらいに輝いていたよ!!」

「白石……」


山本くんが驚いた様に私を見ていた。
だけど、すぐに目を細めて小さく笑った。


「(ありがとう)」


頭の中に響いた優しい声。
それに頷いて、私も目を細めて笑う。


「……もう行くよ、和葉」

「うん!」


正輝は私の手を掴むと、早足に教室を出た。
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