嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「2人とも、俺と友達になってくれませんか?」


照れた様に笑う山本くん。
差し出された両手を呆然と見つめる。
多分、握手を求めているのだろうけど。
衝撃的な言葉に声を出す事が出来なかった。
だけど意外な事に最初に口を開いたのは正輝だった。


「別にいいよ」


ボソリと言い放つキミ。
そんな答えが返って来るとは思わなかったのか山本くんは瞬きを繰り返していた。


「和葉はどうするの?」

「え?あ、ああー」


思わぬ展開に戸惑ったけれど。
すぐに盛大にタメ息を吐いた。


「こちらこそヨロシク?」


疑問形で言えば2人は同時に吹きだした。


「アンタ馬鹿?」

「そこは聞くなよ!」

「え!?何2人して苛めてくるのさ!?」


少しの間、3人で騒いでいたけれど。
すぐに同時に笑い出す。


「じゃあヨロシクって事で」


私と正輝は握手をするために手を離そうとしたけれど。
山本くんは大袈裟に首を横に振った。


「離さなくていい!お前らを引き裂く勇気は俺にはない」


山本くんは自分の手をクロスさせて私たちへと突き出した。


「あ、ありがとう?」

「アンタいいところあるじゃん」


何故か嬉しそうな正輝。
私は首を傾げながらも山本くんの手に自分の手を重ねた。

今、私たちの手がしっかりと結びついた。


「でもさ」

「ん?」


正輝は、また不機嫌そうに山本くんを見ていた。
そして躊躇う事無く口を開いた。


「この子は俺のだから取らないでね。
って言うか早く手を離してよ。もういっその事喋らないでよ」

「はあ!?友達なのにか!?」


理不尽な正輝の言葉に山本くんは絶叫をする。
でも、正輝はしれっと頷いた。


「だって、アンタが和葉の事を好きになる可能性大有りだから」

「あー……もう遅かったりして……」


ニタリと笑う山本くんに私と正輝は同時に目を丸めた。


「もう、どっかいって。離れて、近付かないで」


しっしと手を動かす正輝。
驚きで固まる私。
少し照れたような顔の山本くん。

そんな私たちの奇妙で、素敵な友情が小さく芽生えたんだ。
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